水の中の紅葉

2019年9月28日

岩手県中部北上川水系支流

 

 もうすぐ禁漁、この時期は気温も下がってきている。

県北沿岸の上流域に朝一から入渓するが、この地域は特に冷え込んだ。

10度もない気温に、ゲーターしか持ってきていないことを若干後悔しつつ、ジャケットを羽織る。水温はもう少し高い筈で、上流域なら立ちこむことは稀、何とかなるだろう。

この日は、某メーカーのSさんとご一緒。

吐く息が白く、早く気温が上がることを願って、初めてやる区間に期待は高まる。

しかし、この気温では流石に朝の活性は低く、チェイスは少なくスピードにも欠ける。

なかなか、掛けることが出来ないまま距離が伸びていく。

前後を交代しながら、釣り上がっていき、後ろから観察。

流石に上手いのである。渋い状況でも、何とかチェイスを引き出し口を使わせていく。

その場所に居るの!?とスルーしがちな何気ないところだが、

 

「この時期はこういうところを見逃すな」

 

浅く平たく流れも弱いところから、イワナを掛けるところを見せつけられ、感心することしきりなのである。

結局、この渋い上流部ではSさんが4匹程度釣りあげたのに対し、こちらは1ヒット。

厳しい条件の時こそ、腕と経験の差が出るもの。

己の未熟さを痛感しつつも、これは貴重な体験をしたのだと納得もした。

この水系は水温が上がる午後の方が、好転すると判断して移動。

移動先では、ポツポツと相手してくれる魚が居るものの、パッとした釣果は得られず。

 

時間的に帰りも考えて、内陸へ向かう峠にある小さな山村、そこに流れる細い支流へ移動。

大きな深みは無いが、ヤマメが好みそうな底質。

そして、幸運なことに先行者の影は無し。

入渓点から間もなくの瀬で、大きな魚影。尺はあるであろうのが1本と25cm程度のが、お互いを意識しながら定位していた。

残念ながら、こちらよりも先に気付かれたようでルアーには反応せず散ってしまったが、この日一番の魚にテンションが上がる。

先行させてもらい、少し進んだところで対岸の岩盤に流れが当たり、緩くカーブしたポイント。

カタに居る8寸クラスは掛けられず、本命の流れ込みへ。

1投目はショート。

つい先ほどの魚を意識して、狙った奥まで入れられなかったものの、ミノーの後ろでヤマメが身をくねらせている。

2投目、興奮しつつも長い距離は追わない魚。

3投目、遂にバイト!

若干ドラグが鳴るほど強く合わせを入れて、一気に巻き寄せる。

ネットに迎えたヤマメは果たして。

流れの効いた場所にネットを置いて確認すると、尺には僅かに足りず。

しかし、この色合いはどうだ。

側線は、綺麗に赤く発色し、パーマークも流れずくっきりと残っている。

山のヤマメであることを強く主張したまま成熟している。

飴色掛かった体色に、背中は茶色が強い。

体表は、かなりのぬめり。

そして、赤みが腹の部分まで発色している。

側面が濃く赤くなる魚は今まで見てきたが、こういう個体には初めて出会った。

下流からの遡上は出来ず、放流もされていない場所と思われ、これは昔から残った血が発現した姿なのかもしれない。

 

Tackle

    Rod Revo55改49

    Reel Abu Cardinal 33 (Smooth Drag washer tune)

    Line ナイロン 5lb

    Minnow   Cypris48S Amathon50ST

 


久しぶりの出会い

2019年7月19日

北上川水系支流

 

17年3月に大雨が降り、雪を一気に融かし、その川は大増水した。

地元の人に聞いた話では、上流ですら護岸の縁近くまで水位が上がり平水の数十倍の水が流れたそうだ。

テストするのに好都合で時折良いサイズが顔を出すお気に入りの川だったのだが、深瀬は砂利で全て埋まり、踝までのチャラ瀬になってしまったところもある。

比較的影響の少ない区間も少し残っているけれど、魚は激減。体感では1/3以下の数に減ってしまったように思う。

何より次世代を供給する上流部での減少が目立ち、秋に良型を見かけることが稀になってしまった。釣りになる最下流~最上流まで被害を確認して、良型を今後期待するのは厳しいと結論した。

 

それから、しばらくして19年夏。

あれから、時折様子を見ることは欠かさなかったが、その度に傷の癒えないままの川が確認できただけ。

今後もダメそうという結論は変わらない。

しかし、今までと逆の発想で川を見てみる。

被害後、激減した魚。釣れることを重視して少しでも密度の濃い区間を選んで釣っていた。

だが、その区間でさえ、大して釣れないのを思い知った。

逆に魚影の薄い区間はどうか?

サイズは結局のところ、食べたエサの量に左右される。ライバルが少なければ、1匹当たりの餌の量は多くなるはず。

秋に産卵してる個体がほとんど居ない、大雨や雪代等の増水でしか個体が供給されない、条件を満たす区間が自然と導き出された。

 

先月(6月)に初めてその区間をやってみて、ヤマメが居る事は確認できた。それと、上流には居ないベイトのオイカワ。

短い区間だが、ヤマメだろうと確認できたのは4回。予想通りに少ないが、9寸ありそうなのを取り逃がす。

それなりのサイズが着くと思われるポイントは、僅かに3ヵ所だけであった。

 

そして、時期的に今月までとタイミングを窺っていた今日である。

曇り空にマズメが長引くことを期待して、小さな橋の下流から入渓。

直ぐに上手の瀬で小さいのが掛かるが、バレる。

目星が付けてあるポイントまでどんどん進み、若干川底が変化しだす所から気を引き締める。光量少なく、白く反射する水面が意地悪する。

一つ目のポイントは反応なし。

両岸に林がある日陰のポイント。この瀬は少し長さがある。

本命2か所目であり、付いているのは流れ込みから5m程続く岩盤スリットだろうと読んでいた。

カタから打って距離を縮めていく、あと何投かでスリットまでというところ。

そろそろ本命と思っていたところ、ヒラを打ちつつ戻ってくるアマトンSTを白い影にさらわれた。

あんな石もないフラットな場所から!?とたじろいで、一瞬合わせが遅れてしまった。

幸いながら、大きく煽ったロッドは重みを捉えることに成功した。

小さな川なので魚までの距離は近い、若干ドラグを鳴らしながらも一気に巻き上げてネットイン。

側面に薄っすらとピンクを浮かばせる魚体は小渓流とは思えぬ体躯の32cm。

ベイトには、小魚も含まれていると思われる本流で釣れるような体型。

やはり、このポイント近くのベイトを独り占めして育ったか。

続いて、最後のポイントは反応なし。

終点の堰堤下も軽く探ったが、やはり反応なし。

この区間で得られたのは、2バイト。

読みと期待が一致した結果には満足だが、このヤマメが釣れることになった環境の変化を考えると、複雑で素直に喜べない部分もある釣行だった。

 

Tackle

    Rod Revo55改49

    Reel Abu Cardinal 33 (Smooth Drag washer tune)

    Line ナイロン 5lb

    Minnow   Cypris48S Amathon50ST