Land Locked Red Salmon 2012 Day 2nd part 3

取り敢えず、今日もヒメマスの顔を見ることが出来た。

ジグのアクションの確認や試作品のミノーのスイムテストも出来た。

 

気付くと既に13時を過ぎている。少々遅いが昼食を取ることにする。

ロッドッと一緒に持ってきたクーラーボックスに入れてある飲み物とパンやおにぎりを取り出す。

近くに横たわっている流木に腰掛けながらお茶を飲む。湖岸を眺めながら。

 

しばらく前から風が出てきている。この湖は夜明け頃は風もなく大人しいが、午後になると風が吹いてきて湖面を波立たせる。それほど強くはないが、キャストして伸びていくPEラインが横に弧を描く。

この時期に訪れると大抵はこんな感じだ。この湖の立地条件や周囲の地形がそうさせるのだろうか。

 

釣りはこれくらいで十分だ。

今日は行ってみたい場所が有った。この湖で一番大きな流入河川だ。

地図で確認しても湖の規模からみればそれほど大きくは無いのだが、今まで見たことが無かった。

タックルを持って車へ戻る。

 

流入河川までは車でも少し時間がかかる。湖の反対側だ。20分ほど車を走らせ、インレットに近いところから湖に向かっていく脇道に入る。

ここから湖岸を少し歩いていけばインレットに辿り着くはずだ。

 

念のためロッドを持って湖岸へ向かう。

この辺は砂利が多く遠浅の地形のようだ。目立ったポイントは見えない。

試しにジグをキャストしてみたが10秒ほどで底に着く。水深は5mもないのではないか。

 

インレットに向かって歩く。次第に砂利が細かくなり砂に変わっていく。

見えた。

思っていた以上に静かな流れだ。夏場の少雨の影響も大きいだろう。

この付近もジグを投げて探ってみたが遠浅の地形は変わらない。

流れが利いている部分は砂が掘れ深くなっている程度。少し離れたところにはカケアガリが有った。

インレット周辺を1時間程かけてジグやスプーンで探ってみるが魚からのコンタクトは無い。

 

スナップからスプーンを外し、ラインをスプールへ巻き留める。

スプーンもワレットへしまった。

 

インレットから上流へ向かって歩いていく。川幅は5mもない。水量は小渓流と変わらない。

流れは林の中へ続いていく。

砂利の浅瀬で魚が走った。小型のサクラマスだ。

何匹かのヤマメの姿も見える。

 

100mも歩かないところで落差の小さな堰堤が現れた。

 

堰堤からの浅いカケアガリに紅い影が揺らめいていた。

サクラマスの大きな雄だ。今まで見た中でサクラの中でも一際紅い。紅花の赤を濃縮した様な感じだろうか。ヒレは黒いが全身がその色に染まっている。

これほど鮮明な婚姻色を浮かばせるサクラがいるのか。

 

もっと近くでよく見てみたくて近づいたら、そのサクラは白泡の下に沈んでしまった。

目を凝らしてみると別のサクラも泳いでいる。

 

最初の堰堤を越えていくと川は緩くカーブしている。その先の浅瀬には50cm程の雌のサクラマスがいた。雄とは違って全身が黒ずんで紫の縞が見える。

その魚は産卵床を掘るために身体はボロボロになっていた。尾ビレはほとんど条しか残っておらず、もはやヒレとしては機能してはいない。顔も砂底に擦れ片側が白くただれている。その部分は腐り始めているようだ。片目はたぶん見えてはいない。

お腹に卵はまだ残っているがとても痩せている。おそらくはあと数日の命。

 

そんなサクラをしばらく見つめていた。

今になって思えば写真の数枚くらい撮影しておけばよかったと思ったりもするのだが、この時はそんなことは思いもしなかったのである。