#2 ピンスポット

2020年9月29日 北上川水系支流

 

20年シーズンも、あと僅か。

毎年の終盤の釣行でルーティンに入る欠かせない川である、この川で、尺を獲りたくて通っている。以前は、下流域もやっていたけれど17年春の水害でダメになってしまった。

上流も淵が砂で埋まり、ガクンと個体数が減ってしまったけれど、数年が経ち少しずつ回復が見られてきた。

今年なら・・・、淡い期待を抱きながら車を走らせ、駐車場所に他のクルマが無いことに安堵する。

そそくさと準備を済ませ、狙うは本筋に注ぐ小さな支流。道からは直接、その沢を窺うことが出来ない。この時期、雨の後に本筋から差してきた個体を狙う。

増水加減の時でないと、ポイントのメリハリが無くなるほどの細い流れ。時期と水の加減のタイミングが幸運にも一致した今日、果たして。

 

合流点から上ってすぐに、岩盤の淵。この辺が、この沢の核心の一つなのだ。

例年なら、淵から続く開きに定位している25サイズが居ることが多いのだけれど、お留守。

淵にはガッツリと倒木が刺さり、美味しいレーンを通すことが出来ない。

魚に見られることを覚悟して、上手に回り込んで流すも、それらしい影は無し。

 

今日じゃなかったか・・・、本命の一つを外して落ち込むも、これからの工程は長い。

何処かで当たるはず・・・と、直ぐ上のポイント、岩盤の瀬から次の落ち込みへ流れる直前に、岩盤の盛り上がりが在った。盛り上がりは、大きなバケツよりは大きい程度、直径はクルマのタイヤくらいか。

普段の水量ならば、素通りするかもしれない所で黒い影が飛び出してきた。

2投目で僅かに口先に当たった感触があり、ミスったかと冷や冷やしたが、随分と興奮しているようで、その後も勢いよく飛び出してくる。

ただ、落ち込みに流れる直前のその場所は流れが絞られ急激に流速が増している。

魚も流れに定位はしたくはないように見え、盛り上がりの根元から横に50cm程度しか出てこない。

ミノーは、アマトン50を使っていたのだけど、こいつは強い流れは苦手で、違うモデルに変えようかと思ったけれど、この時はこのままの方が良いような気がした。

静かにサイドに回り込んで、いくらかでも時間を稼ぎつつ流せるように、速い流れでもバイトを弾き難くなるよう柔らかい操作を心掛けた。

その後も何度も顔を出す魚だが、短い距離でバイトさせることが出来ない。

いつまで相手をしてくれるのか、少しずつ焦りも出るが、チェイスする距離が80cmになった。それから、3投程だったか、それが1mになり流心のこちら側まで出てきた時にバイト!

細い支流、ヒットした後はあっという間に足元へ、ランディング。

パーマークは、上下に伸びつつも、比較的はっきりしている。

顔周りは、成熟が進んで渋い色合い。

秋は、暖色系の色合いが良いと感じている。

ぬめりを増した身体は、艶やか。

ネットに収めた時に思わず声が出てしまった駆け引きだったけど、何とかこちらに軍配。

目標には届かず、28cm。

最初に見えた時は、もう少し大きく見えたのだけど。もしかして、もう1匹居た?

いやいや、これも素晴らしい魚。これで、十分楽しませてもらった。

残りの区間は、ゆったりと満喫しようと、その後釣り上がった。

 

Tackle

    Rod Espada51MLⅡ

    Reel Abu Cardinal 33 (Smooth Drag washer tune)

    Line   ナイロン 5lb

    Minnow   Cypris48S  AmathonST50

 


#1 1シーズン1本

2020年9月16日 北上川水家支流

 

以前よりも魚が減った川、そんな場所が増えてきている。

原因は様々だが、環境の荒廃や釣獲圧力過多が殆ど。

やっと、良い川を見つけたと思っても楽しめるのは数年だけだったりする。

この川も秋になれば、尺クラスを見つけることは難しくなかったが、ここ数年は困難になってしまった。

川は砂利で平坦になり、そして特定の人だと思うのだけど過剰な持ち帰りによる乱獲だ。

小さな川なので出る区間は決まっている。ここぞというタイミングで赴いても、朝マヅメか前日にやられた後だったりすることばかりだった。

大場所でも手のひらサイズ、次世代を残すべき魚が見えない。

多少の持ち帰りは楽しみとして許されるとしても、川の規模を考えないとあっという間に居なくなってしまう。

 

今シーズン、この川は今回が最後、そう決めて臨んだ日。

秋はこの区間だけをやればいい、何回も通って導き出した結論。

周りの木々により日陰のため、十分に明るくなってから入渓。

3ヶ所の淵が連続する、例年ならば何処かでそれなりのサイズが顔を出すはず。

1ヶ所目、砂利で浅くなった場所、チビが2匹程度が見えるのみ。

3投程で見切って、次へ。

2ヶ所目、大岩があるが水害で底がなだらかになってしまった淵。

ここでは、チェイスすらない。

既に抜かれた後か、今年もダメかと気持ちが沈んでいく。

最後の淵、すっかり浅くなって流れの筋も、ちょっと変わってしまった。

例年ならば、流れの筋の左側に定位しているはず。

何回か丁寧に流すも無反応。

この川も終わったかと、緩い反転流に投げ入れてトゥイッチして引いてくる。

薄暗くはっきりとは底が見えない場所を通った時、ズンッ!と重い手応え。

反射的に合わせた後にぐるぐると身をくねらせる薄ピンクの魚体。

ドラグをちょっとだけ鳴らしながら、あっという間に足元まで引き寄せる。

勝負あり。

久しぶりの良型に行ったか!と、興奮しながらメジャーを当てるも1cm足りず。

でも、このサイズに出会うのが本当に難しくなってしまった川での結果に素直に嬉しい。

パーマークの形や数はこの川の個体らしさが出ている。

きめ細やかな鱗と肌。

少し幼さも感じられる顔つき。

 

久しぶりの出会いに、いつまでも眺めていたい気持ちがありつつも、次世代を残してくれることを願ってリリース。

 

Tackle

    Rod Espada51MLⅡ

    Reel Abu Cardinal 33 (Smooth Drag washer tune)

    Line   ナイロン 5lb

    Minnow   Cypris48S  Arrow53S